お墓じまいをするには/お墓にまつわるおはなし②

先日開催した『お墓にまつわるおはなし会』、その時にお伝えした内容を元にしての第二弾は”お墓じまい”についてのおはなしです。お墓じまいについてのあれこれ、今回も一般的なポイントに続いて正光寺でご案内している内容を詳しくおはなしします。

お墓じまいをするには

正光寺のある雀宮に限らず、お墓についての悩みは全国地域に渦巻いています。生活環境が変化してゆく中で先祖代々のお墓を守っていきたいけどこの先後継者がいない、今のままのお墓では管理するだけでも大変でこのまま子孫に継がせたくない、費用は一体どれだけかかるのか、誰に相談していいかもわからないなど、多くの人にとって切実な問題となっています。お墓についての悩みを解決して日々の暮らしに安心をもたらすにはどうしたら、長くなりますが、今回もまずは一般的なポイントと、続いて正光寺でご案内している内容についておはなしします。

お墓じまいとは

『お墓じまい』とは、先祖のお墓を閉じて、遺骨を別の場所に移したり、供養の形式を変えたりすることを指します。その理由はお墓の管理が難しくなったり、後継者がいないなどさまざまです。

お墓じまいの流れ

お墓じまいの一般的な流れは以下の通りです。

1. 親族への相談
お墓じまいは家族や親族と話し合うことが重要です。家族みんなのご先祖に関わることなので、慎重に話し合いましょう。

2. 墓地管理者への連絡
墓地や霊園の管理者(ある場合)に「お墓じまいを検討している」と連絡しましょう。施設によっては手続きや書類が必要で、閉鎖や移転にはルールがあるため、事前に確認が必要です。

3. 閉眼供養(へいがんくよう)
閉眼供養とは、お墓を閉じる際に行う供養の儀式です。寺院等にお願いして、お墓の魂を抜くための法要を行います。

4. 遺骨の移転先
遺骨の移転先として、次のような選択肢があります。

納骨堂/室内に遺骨を安置できる施設。管理の負担なし。寺院、市営・民営施設。
樹木葬/自然への回帰をイメージした形式で、人気が高い。寺院、市営・民営施設。
合同供養墓(合葬墓)/特定の場所に一緒に埋葬される施設。寺院、市営・民営施設。
各種散骨/海洋、山、その他

5. 墓石の撤去と整地
お墓じまいをするには、墓石の撤去や整地が必要です。石材業者に依頼して墓石を撤去し、土地を元の状態に戻します。

6. 手続き
墓じまい後に遺骨を移動する場合、管理者の有無や受入れ先の規則によって改葬許可証の取得~提出など行政手続きが必要になる場合があります。

お墓じまいにかかる費用

お墓じまいにかかる費用について、一般的な内訳と相場は以下の通りです。

1. 閉眼供養(へいがんくよう)
お墓じまいをする前に寺院に依頼する供養の費用です。2万~5万円ほどが一般的ですが、地域やお寺によって異なる場合も。依頼する場合は事前に費用を確認しましょう。

2. 墓石の撤去費用
墓石の撤去費用は使用している石材の量、立地条件によって異なります。墓地が狭小地や山間部など作業がしにくいい場合や、大型の墓石がある場合はさらに費用がかかります。条件に応じて30万~100万円の開きがあります。

3. 改葬許可証等の取得費用
遺骨を他の場所へ移動するには改葬許可証が必要となる場合があります。手続き自体は市区町村役場で行われ、手数料は数百円~数千円ほど。

4. 新たな納骨先の費用
遺骨を新たな場所に安置するための費用です。施設・方法によって費用が異なります。

納骨堂/永代供養を含む場合は、10万~50万円程度が一般的。
樹木葬/10万~30万円程度。
合同供養墓(合葬墓)/永代供養が付属する形の共同墓地。数万~20万円程度。
各種散骨/5万~20万円程度。

5. その他費用
お寺の境内墓地をお墓じまいする際、離檀料を請求されるケースがあります。

正光寺でのお墓じまいについて

正光寺でのお墓じまいご相談の際に案内している内容です。

お墓じまいについて正光寺で必ずお話ししていること

正光寺の地元雀宮は管理者のいない共同墓地が多く存在しています。昔は一族のみで使っていた墓地に後からお墓が増えて拡大していったケースも多く、周辺の開発により旗竿地状で住宅地の奥に残っている共同墓地も。荒れたお墓からの雑草の侵食、共有部分の老朽化、駐車スペースの消滅などいろいろな問題が垣間見えます。法整備される前からの墓地など成り立ちや所有者があいまいで行政でも細かく把握されておらず、近年増加する無縁墓や墓じまいで墓地と周辺環境が変化していく中で、この先さらに生じるさまざまな問題に各地区行政の対応を期待するのは難しい状況です。
ご相談を頂いた方に必ずお伝えしているのは、もしお墓じまいの必要性を感じているのであれば、その検討は早めのうちがいいというアドバイスです。焦る必要はありませんが、この先の人口変動を考えればお墓が全国的に大きな課題となり、変化していく墓地環境は後になるほど不安要素が増える可能性があります。だからこそお墓じまいは早めの検討が重要であり、その支えとしてお寺などが今のうちから(行政ではまだ難しい)積極的な対策を講じて地域をリードするべきだと実感しています。お寺がお墓じまいからの集約場所として納骨堂やその他設備をしっかり整えることは、それによってもたらされる地域生活の安心はもちろん、地域でのお寺の存在意義を高めることにもつながります。

実際に正光寺では令和6年に入ってからずっと複数のお墓じまいの案件を抱える状態が続いており、相談を含めたその件数は大幅に増加しています。そのために永代供養のバリエーションはもちろん、間口60㎝小型墓地の整備に加えて永代供養とセットになったパネル型のお墓も来春案内に向けて計画を進めています。どのようなケースにも対応できるような複数の選択肢の中から家族のこれからに一番合う方法を選び出してもらうこと、家族のこれからに安心が得られることが何より大切だと考えています。

墓石の撤去費用と見積もりについて

お墓じまいにかかる費用の中で、墓石の撤去費用はその大部分を占めます。都心部などに比べて地方のお墓は面積も大きく使われている石材も多い点や、古い墓地は通路などが狭く作業機械の移動設置が困難など、お墓をめぐる条件に比例して撤去にかかる費用は大きくなります。加えて自社で墓石の最終処分まで行える石材店さんが少ないという現状もあり、施工の際の最終処分までの工程次第で費用が大きな違いとなって現れてきます。

例/お墓じまいでの墓石撤去費用の見積もり
・同一石材店による異なるお墓じまい見積もり
4.2㎡墓地/ 250,000円 共同墓地、平均的な大きさ、石塔は洋型
5.6㎡墓地/ 450,000円 市営霊園、平均的な大きさ、石塔は和型
7.0㎡墓地/ 690,000円 共同墓地、大きめ、石塔は和型、入り組んで作業しにくい墓地環境

・複数店による見積もり
墓地①/ A社/250,000円 B社/600,000円
墓地②/ A社/590,000円 C社/935,000円

これらはどれも各業者さんにとっての正しい見積もりであり、どれが良い悪いというわけではありません。これだけの差が生じるということはお墓じまいがまだまだ“過渡期”にあり、今後いろいろな整備が進む中でこの差は是正されていくと考えられますが、現在のこの費用の差は家族にとって大きな負担に違いありません。このような状況からお墓じまいの検討に際しては複数業者さんによる見積もりが欠かせません。

お寺にまつわる費用

お寺の境内墓地からお墓じまいをする際、そのお寺の納骨堂への移設ならともかく、そのお寺以外の施設へ移す場合に離檀料を請求される場合があります。田舎のお寺のお墓を撤去して、近所のお寺に納骨含め今後の供養をお願いしたいというようなケースにおいてしばしば聞かれ、時にはかなり高額な離檀料を請求されることもあるようです。市営霊園や共同墓地ならあまり心配する必要はありませんが、お寺の境内墓地となると石材店さんの関係もあって許可なしでの撤去作業やお骨を取り出すことが難しくなることがあります。
永年お世話になったお寺から離れることはとても大きな決断なのと同時に、過疎化の波に瀕している地方のお寺などにとって檀家さんが離れることは将来にとっての影響も少なくありません。いろいろな事情が交錯しますが、施主さんには丁寧な相談を心がけて頂きつつ、こういった場合ではお寺側にもできるだけ寛容に対応してもらえることを願っています。正光寺ではお墓じまいに限らず離檀料等は一切ありません。

お骨の移設先と供養方法について

永代供養込みパネル型墓地(完成イメージ)
お墓じまいに伴うお骨の移設先にどこを選ぶかも大切なポイントです。お墓じまいからの納骨費用をおさえる為には市営の霊園などに設置されている合同供養墓が候補の一つとなりますが、多くが郊外地にある点などアクセス面での将来的な課題、墓誌への刻名がないなど家族のお墓としての意識が薄れてしまう点や、人気が高く抽選方式だったり利用条件が細かく設定されている点など、要検討なポイントです。

正光寺では、お墓も永代供養も、気軽なお参りで日々の安心につなげてもらうためにも、今生活している地域の近くで検討してもらうことをまずおすすめしています。またお墓じまいからの永代供養受入れに関して、先祖代々のお墓などお骨の数がたくさんあるような場合も多く、費用については永代供養料×人数ではなくそれぞれ無理のない形でご相談に応じています。
またお墓じまいからの永代供養だけでなく、将来が不安な共同墓地から境内墓地の小型墓/パネル型墓地(来春案内予定)へ移設するなどのケースもあります。下記を参考にご覧ください。

・宇都宮市の直接納骨施設(例)
東の杜霊園合葬墓 25,000円
※樹木葬型/市内在住者条件 収容数10,500体/墓誌等なし

・正光寺でのお墓じまい~永代供養およびその他の費用
お墓の閉眼供養(魂抜き) 20,000円
永代供養料(基準) 300,000円/合同供養墓への直接納骨50,000円/夫婦 500,000円
小型墓地 200,000円~
パネル型墓地/永代供養込み(2025年春案内予定) 500,000円程度予定

・正光寺でのお墓じまいからの永代供養受入れ例
①県外からのお墓じまい/ 永代供養納骨/遺骨7体(50回忌~3回忌) 60万円
②県内寺院からのお墓じまい/ 永代供養納骨/遺骨6体(50回忌~17回忌) 25万円

※正光寺/上記は基準額として、実際はそれぞれの状況に合わせて無理のない形でご相談に応じています。

正光寺でご案内のお墓じまい費用一覧表(参考目安)

※あくまで基準額による計算として、実際はそれぞれの状況に合わせて無理のない形でご相談に応じています。

さいごに/お墓じまいについて思うこと

お墓じまいの相談を受ける際に必ずと言っていいほど感じるのは、長く大切にしてきた家族のお墓をしまうことに対する施主の苦悩です。できることなら大切に使い続けていきたいという思いと、そうはいっても実生活の中でこれ以上守っていくのはどうしても無理がある。みなさん伝統的慣習と現代生活の板挟みになって葛藤している姿を目の当たりにします。
お寺としてもお墓じまいを推奨するわけではなくできることなら大切に使い続けてほしい、しかし実生活の無理を押してまで続けることで家族が疲弊し、暮らしを豊かにするはずの信仰からどんどん遠ざかってゆくことは何としても避けるべきことであり、苦しみ悩んでまでお墓を守り続ける子孫の姿をあの世から先祖が喜んで見ているとも思えません。

昔は近くに住む一族同士で一緒に守れていたお墓は、そのために威厳を込めて大きく豪華に作られてきました。しかし現代の生活様式が激変する今、その他様々な伝統的慣習と同じくお墓や供養の形も大きな変化が求められていると感じます。ちゃぶ台をひっくり返すように古きを反故にするのではなく、実生活と照らし合わせながらより良い形をみんなで模索することで、本当に大切なことを引き継いでいくきっかけにできれば。お寺のはたらきが地域に暮らす人の日常生活に安心と豊かさをもたらすものならば、先人によって伝統的慣習に込められた大切な心と現代生活とのすり合わせをお寺こそが行うべきであり、古きの中から新しき形を見つけ出して地域の安心と未来をリードしていくべきだと思います。

どうか無理することなく、日々の暮らしの安心を目指して、お墓じまいはじっくりと検討してみてください。そのためにいつでも気軽にご相談を。正光寺はしっかりとそのお手伝いをしていきます。